クィーンズ病院の Infant Security(乳児保安)システム

この文章は 2001/1/18 に書き下ろしました。


日本では新世紀早々、鳥取の新生児連れ去り事件が世間を騒がせましたが、ああいう事件は白玉が入院していたクィーンズメディカルセンターでは、まず起こりそうもありません。入院レポートの続きはちょっと後回しにして、クィーンズ病院でのインファントセキュリティシステムのことをお話しします。

入院当日のレポートにかいた通り、出産を終え産褥室に移動するとすぐ、いろんな書類と一緒に INFANT SECURITY なる書類をもらい、承認のサインをして写しを手元にもらいます。レターサイズの書類にびっしり書かれたポリシーを一読すると、アメリカの産院での何重にも厳しいチェック体勢がよく判ります。でもそれだけ当地では、今回の鳥取みたいな乳児連れ去り事件が、多く起こりうるってことなんでしょうね。

=自己流翻訳・引用始め=

あかちゃんは貴重な授かりものです。あなたのあかちゃんの安全が、わたしたちにとってこの上ない重要事項なのです。

当院で実施されている安全措置は以下の通りです:


1. 同じ番号のついたIDバンドが、あなた(母親)、あなたのあかちゃん、そして父親または出産に立ち会った重要な誰か、の腕に巻かれます。後者(=父親または第三者)が立ち会わなかったりバンド装着を辞退した場合には、第四のバンドは破棄されます。

2.これらのバンドはあかちゃんがあなたか父親に渡される際、必ず目視で照合されます。

3.どのあかちゃんも足首に電気センサーを巻かれます。(注:日本でもCDショップなどで見かける大きな保安ゲートが、産褥病棟の入り口にありました)

4.新生児室から廊下へ続く入り口はすべて、常に施錠されます。

5.新生児室への入室鍵は、産褥および新生児担当スタッフのみが保持します。

6.10階(注:クィーンズ病院の出産・産褥フロア)の病院側スタッフは皆、消毒した制服を着用し、クィーンズメディカルセンターの写真入りIDカードを胸に着けています。

7.10階のスタッフは皆、(6.とは別の)第二のIDバッジも着けています。

8.新生児は皆写真を撮られ、そのネガフィルムは一年間保管されます。

9.ハワイ州の法律では4才以下のこどもはチャイルドシート着用が義務づけられています。退院に先立ちチャイルドシートを車に取りつけておいてください。チャイルドシートレンタルもあるので、できるだけ早く看護担当者に申し出てください。

あかちゃんの安全のためにあなたができることは:

1.病室からあかちゃんを連れ出そうとする全ての人に、ID提示を求めること。どんなことでも疑問を感じたら、ただちに看護担当者を呼んでください。

2.あかちゃんの足首から電気センサーが取れたら看護担当者に報せてください。

3.あかちゃんを抱いてデイルーム(誰でも立入れる談話室)の前を歩いたり、陣痛出産棟に立ち入ったり、ラナイ(ベランダ)に出たりしないでください。

4.退院に先立ちチャイルドシートを車に取りつけておいてください。

5.必要であればチャイルドシートレンタルシステムについて照会してください。

クィーンズメディカルセンターのスタッフ一同、お祝いと、この先安全に入院生活を過ごされることをお祈りいたします。

わたしはこの書類を読み、上記の情報を理解しました。
(患者のサイン、日付欄)
(看護担当者のサイン、日付欄)

=自己流翻訳・引用終り=

どうです?こうしたシステムが鳥取の産院にあり、厳密に運用されていたのなら、あの事件は決して起きなかったと思いませんか?

何度もうるさく言われるチャイルドシートの使用も、こういうのを読むと乗車中の肉体的な安全だけでなく、連れ去りや第三者の手に渡る危険をも防ぐ役割をするんだな、って再認識させられます。また「ラナイに出るな」は、まさか個室のラナイにあかちゃんを強奪する人が来るとは思えないけれど、不用意にあかちゃんの所在を不特定多数の前で明かすと後々危険があるかもしれない、って警告。これを読んだときは、つい誇らしげにあかちゃんを見せびらかしたくなる産婦の気分を、ぐっと引き締められた気がしたものです。

そしてこういう病院側の体勢を患者に公表し承認を求め、同時に入院中のおかあさんもこれだけ留意してくださいね、って患者の義務も明記した姿勢は、責任の範囲と所在がはっきりしていて気持ちがいいくらいでした。

(まだまだネタはあります。つづく。)


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