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The Bus の定期紛失

この文章はニフティサーブ FPACIFIC 「暮らすHawaii」会議室への 98/7/4 アップ分を
ほぼ全文引用しております。当時はまやが生後8ヶ月でるな妊娠の数ヶ月前。
白玉だんごが公のパソコン通信会議室にアップした、最初のまとまった文章でした。



みなさんこんにちは。ホノルル在住の白玉だんごです。 先日子連れでThe Busにて外出したところ、リュックにつけておいたThe Busの月間パスを紛失してしまいました。ちょっと長くなりますが、その時の話を聞いてください。

わたしはいつも、生後8ヶ月の娘を連れ、たたんだベビーカーを持ってバスに乗ります。大荷物で乗り降りのときは両手がふさがってしまうので、$25の月間パスを購入し、安全ピン付きのカードケース(展示会の入場券を胸につける時に使う、あれです)に入れてリュックの右側にぶらさげていました。そこだとバスに乗って車内に進むときに、運転手さんが見やすいからです。今から思うと「運転手さんに見やすい」ということは、「他の誰にも見やすい」ということだったのかもしれません。

忘れもしない6月30日、#4バスのイーストバウンドに、Nuuanu. St.から乗りました。わたしはいつものように、バス停のベンチに娘を待たせてベビーカーをたたみ、冷房対策に娘のおなかから下を大きなパレオでくるんで待ち、来たバスに乗りました。右手に腰のすわったばかりの娘、左手にたたんだ大きなベビーカー、背中にリュック。もちろんその時に、'The pass is here.'と運転手さんに背中のパスを見せました。車内の乗客が前方の席をゆずってくれたので、すわってベビーカーを足で押さえた状態で、娘をあやしながらダウンタウンのカメハメハ像の先まで乗って、降りました。

降りた場所は芝生の広がる大きなバス停で、いくつもあるベンチには大勢の利用客がにこやかに話しながら自分のバスを待っています。わたしの格好を見て座っていた中年の婦人が二人、'Need some help?'と声をかけてくださったので、お言葉に甘えてベビーカーを広げるあいだ、ちょっとの間娘を抱っこしていただきました。そしてとりあえず両手があいたわたしはお二人にお礼を言い、ベビーカーを押しながらダウンタウンの方へと歩いていきました。ここまでリュックは背負ったままです。

その日は郵便局で切手を買う用事があったので、Post Officeと書かれた古めかしい建物の、中庭から構内にはいりました。ちょうどランチタイムで、中庭の回廊には座って芝生に足を投出し、プレートランチを食べているビジネスマン二人がいました。天気もよく、木立のなかから小鳥の声がきこえる、のどかな昼下がりの風景です。その二人の背中あたりを進んでいて、わたしは急にリュックの重みをずしりと感じ、「そうだ、リュックを下ろしてベビーカーの下のカゴに入れれば、すこし楽になるな」

ここでちょっと説明ですが、わたしのベビーカーは、カゴに何か入った状態ではたためなくなってしまうのです。だからバスに乗る日には、荷物や買い物は全部背負える量にとどめておかねばならず、その流れでバスを降りたあとも、カゴが空っぽなことを忘れていることが、少なくないのです。

そこでベビーカーを止め、大きなリュックを「よっこいしょ」と下ろし、カゴの中にがさがさと押し込みました。二人のビジネスマンはすぐ横にいましたが、わたしの気配に気づいていたかどうかは、注意していなかったのでわかりません。不覚な事にこの時は、リュックの横ポケットに入れていた哺乳ビンが落ちない事に気を取られていて、その向うにつけていたカードケースの存在は、すっかり忘れておりました。ですから、この時点でカードケースがどういう状態だったのかは、わかりません。

とりあえず、背中が軽くなったわたしは建物に入り、古めかしい私書箱の並んだ廊下を進んで郵便局の自動販売機まで行きました。すぐ横に男性がひとり、同じく自動販売機の切手を選んでいたのですが、よく機械を見ると'Out of order'の紙。となりの男性とわたしはほぼ同時にそれに気がつき、目が合ってちょっと苦笑。わたしもなんとなく会釈をして郵便局の中に入り、順番待ちの列に並びました。自動販売機の前で一旦財布を取り出したので、そのままリュックはまた背中です。その男性もわたしのすぐ後ろに並んだようです。5-6人ののち自分の順番が来たので用を済まし、出口近くに立ち止まって財布と切手をしまいました。このときもリュックを一旦開いたものの、カードケースには全然注意を払いませんでした。そしてここでリュックをまたベビーカーのカゴに押し込み、郵便局の外へ。

通りに出ると時間はもう2時過ぎ。急に空腹をおぼえたわたしはMerchant St.を進み、適当な角を曲がってランチの店に入りました。店内にもう他の客は一人もいません。ベビーカーを押しながら弁当とドリンクをゆっくり選び、購入。リュックはこの時はカゴからは出さず、財布だけ引っ張り出して使いました。その後会計カウンターに自分のトレイを置いたまま、座席スペースに先にベビーカーを押して置いてこようとしていると、頼まないのに若い女性の店員さんが後ろからついて来て、わたしのトレイを運んでくれました。'Thank you!'

奥まった座席にベビーカーを落ち着け、イスに足を投げ出してやっと一息。それでも自分の食事の前に娘のオムツだけは替えてやろうと思い、ベビーカーの後ろに回ってリュックを引っ張り出すと、・・・ここでやっと気づいたのです!カードケースのピンの部分から先が破れて無いことに。6月分のパスはもちろん、買って6月分と重ねておいた7月分のパスも、2枚の後ろに入れていた支えの厚紙も、影も形もありませんでした。

急に疲れを感じて昼食にかぶりつきながら、わたしはここまでの経路を反芻しました。バスに乗った時は確かにあったはずなのに、いつ、どこで破れたのでしょう?何かのはずみで引っかかってこわれたのか、それともここまでにわたしの周囲にいた誰かが、故意に破ってパスを抜き取ったのか、今となっては知るよしもありません。危険を各所で指摘されているのを知りながら、背負ったリュックから目を離したわたしにも、責めはあります。でも、一回も使わずにどこかへ行ってしまった7月分のパスのことを思うと、疲れた体にくやしさがこみあげて、泣きそうになってしまいました。何も知らずに哺乳ビンをにぎって笑う娘の姿だけが、ちょっとした救いでした。

この日、帰りは$1紙幣を口にはさんでバスに乗り、運転手さんに取ってもらいました。昨日まで便利に見えたバスの定期も7月分を買い直す気力が失せてしまい、とても、とても後味のわるい一日でした。

今後、二度とこんな思いをする方がいらっしゃらないことを、心から祈ります。
くどい話におつきあいいただき、ありがとうございました。


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